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亀山市
亀山市 産業環境部 環境課 生物多様性・獣害対策グループ| 2026年9月10日
#住民参加#官民連携#市民参加#生物多様性

地域の自然を「みんなで守る公共資産」へ ~市民・土地所有者・企業・行政の協働で進める、亀山市のネイチャーポジティブなまちづくり

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イチオシポイント

亀山市の取組の最大の特徴は、「身近な自然が、まちづくりの重要な基盤である」こと、そして「自然は誰かが守るものではなく、地域のみんなで守る公共資産である」という価値観を、自治体として明示したことです。 また、亀山市は自然が多く残る人口約5万人の地方都市で、人口が多い大都市ではありません。そんな亀山市における地域版の認定制度、企業との継続的な協働体制の整備、金融機関との連携という一連の施策は、人口規模や財政力にかかわらず、他の自治体にも応用可能です。 亀山市のような地方都市の自治体においては、環境施策の優先度は高くないことも多く、豊かな自然はあるものの、ネイチャーポジティブに消極的であるケースも多いのが実情です。そんななか、地域ごとに存在する里山、農地、社寺林、企業緑地などを起点に、生物多様性保全を地域経営・企業活動・市民参加につなげる取り組みは、抽象的で具体化がしづらいネイチャーポジティブ推進において、全国の自治体のモデルケースとしての価値があります。

どんな課題にアプローチしましたか?

生物多様性の損失は、気候変動や環境汚染と並ぶ重大な社会課題です。生物多様性の損失を止めるだけでなく、自然を回復軌道に乗せる『ネイチャーポジティブ』の実現は、国際的な課題であると同時に、持続可能な社会を実現するうえで避けては通れない課題となっています。 日本においては、豊かな自然は、国立公園などの保護地域だけにあるのではありません。各地域には、田畑、里山、社寺林、企業の緑地など、人々の暮らしや生業と結び付いて維持されてきた身近な自然が数多くあります。こうした場所は、日々の管理によって生きものが支えられている一方、担い手の高齢化、管理負担の増加、自然の価値の見えにくさなどにより、保全活動を続けることが難しくなっています。 従来の自然保護や生物多様性保全は、行政が制度をつくり、専門家や限られた市民団体が取り組むものと受け止められがちでした。また、民有地や企業敷地内の自然は、地域全体にとって重要であっても、その価値が社会に共有されにくく、保全活動が個人・団体の善意や負担に委ねられやすいという課題がありました。 そこで亀山市は、「特別な自然だけ」を対象とするのではなく、市民、地域団体、農林業者、土地所有者、企業などが大切にしてきた身近な自然を、地域全体で価値を認め、支え、次世代へ引き継ぐ『ネイチャーポジティブなまちづくり』の実現に挑戦しています。こうした取り組みは、市民の健康で安全な暮らしや、持続可能な地域経済の維持にも繋がるものであり、これからの地域づくりのモデルケースとなることを目指しています。なお、亀山市では令和7年6月に「亀山市ネイチャーポジティブ宣言」を発表し、令和8年度から運用されている第3次亀山市総合計画においても施策として明記するなど、ネイチャーポジティブ施策に取り組む姿勢を明示しています。

どのような新たな価値を創造しましたか?

第一の価値創造は、これまで個々の所有者や管理者の活動にとどまりがちだった生物多様性保全の取組を、地域が誇る公共的な価値として見える化し、重要な取り組みとして位置付けたことです。亀山市は市民参画により環境政策を検討する「亀山市環境未来創造会議」を運用しており、その場での提案に基づき令和5年度から、市独自で「かめやま生物多様性共生区域認定制度」を策定・運用しています。この制度は、面積の大小、所有や管理主体、その利用目的を問わず、市域の中で自然が守られている場所を認定するものです。土地の境界、管理者、保全・管理の内容、生物多様性の状況、継続的な管理やモニタリングの実情を明らかにし、専門的な知見を有する審査員による審査を経て、市が認定する仕組みです。こうしたスキームは、国が令和5年度より運用している「自然共生サイト」という制度と同じですが、亀山市の制度においては、地域で土地を所有・管理している多様な主体が参画しやすい制度設計を行い、申請前の段階から相談に応じるなど、伴走支援も行っています。この仕組みにより、里山や農地、社寺の境内、企業緑地といった「身近で評価されにくいが大事な自然」を、令和7年度までの5回の審査において14区域認定し、地域の生物多様性を支える重要な場所として可視化しました。認定区域と活動内容は、ホームページや広報誌のみならず、ネイチャーポジティブ施策に関する情報を市内外へ発信する際に広く公表しています。また、認定区域内で生産される産品を「環境ブランド」としてPRすることができる制度となっており、生物多様性の保全を単なるコストではなく、付加価値へと転換することを推奨しています。 第二の価値創造は、生物多様性保全の担い手を広げ、「自然は行政やボランティアが守るもの」から「多様な主体がともに守っていくもの」へと認識を変えたことです。ネイチャーポジティブは企業活動への影響も大きく、今後情報開示の対象になることで、企業価値に直結していく重要な経営課題であるとの認識が広がっています。しかしながら、いまだ企業におけるネイチャーポジティブ活動は手探りで進められている状態であり、具体的な取り組みの方向性を見いだせない企業も多くあります。そこで亀山市では、市域に拠点をする企業からの相談に応じ、かめやま生物多様性共生区域に認定した区域や、生物多様性保全に取り組む市民団体を紹介する等の支援を実施しています。これにより、企業に具体的な取り組みの受け皿を提供するとともに、地域の保全活動において課題となっている担い手不足の解消につなげています。すなわち、行政は活動の主体を代替や補助をするのではなく、保全活動の価値を見える化し、企業等のニーズをつなぎ、地域課題の解消を後押しするというコーディネーターの役割を担っています。 第三に、生物多様性保全と地域経済を対立させず、地域の豊かな自然を地域の持続可能性を支える基盤として位置付け、その認識を広げたことです。令和8年には株式会社百五銀行と、『ネイチャーポジティブの実現に向けたまちづくり推進に関する連携協定』を締結し、普及啓発、企業の保全活動や企業保有地での取組の促進、観光振興、状況把握・情報発信、資金調達体制の構築など、包括的な取組を協働で進めていく体制を整えました。金融機関の参画が得られたことで、「生物多様性の保全は単なるきれいごとではなく、地域経済の維持にも重要な課題である」という価値観が伝わりやすくなりました。また、企業へ訴求するチャンネルが増えたことで、より多くの企業とつながり、協働した取り組みを創出する機会を増やすことにもつながりました。

どんな工夫をしましたか?

1. より多様な主体が参画しやすい制度設計 かめやま生物多様性共生区域認定制度は、面積要件を設けず、田畑、里山、社寺林、企業緑地など、暮らしの近くにある多様な場所を対象にしています。また、どなたでも取り組むことができるよう、事前相談段階から相談に応じ、現地確認から伴走支援を行っています。また、制度に課するPRを積極的に行い、「自分たちも取り組める」ことや「自分たちの活動も地域の自然を支えている」と感じられるように努め、参画の間口を広げています。なお、同様の制度である国の自然共生サイトは、申請書の作成時点でハードルが高いことから、取り組み中心は企業であり、コンサルタント会社へ委託しての取組が多いです。 2. 行政の認定を「評価」だけで終わらせない工夫 認定は単なる表彰や評価ではありません。区域の場所・管理者・保全活動・生物多様性の状況を整理し、専門的な確認を経て、その価値と取組、課題を見える化するプロセスです。活動の見える化は、保全の意義を地域と共有し、活動者自身の継続意欲を高めるとともに、新たな参加者や連携先を生み出す土台になります。 3. 自然保全を「対話の共通言語」にする工夫 生物多様性は専門用語になりやすく、接する機会が少ない希少種を守るイメージがあるなど、地域の人にとって自分事になりにくいテーマです。そこで、「身近な田んぼや里山を維持すること」「企業緑地を活用すること」「市民が地域の自然に触れる機会を設けること」も、広くネイチャーポジティブにつながる行為として捉え、情報発信しています。土地所有者、市民団体、企業、行政が、それぞれの立場や目的の違いを超えて、「地域の自然が重要な基盤である」という認識で話し合い、役割を持てるようにした点が重要です。すなわち、生物多様性を環境行政の専門テーマではなく、地域の暮らし・経済・教育・誇りをつなぐ共通言語へと位置づけを変えるように取り組んでいます。 4. 民間企業との継続的な協働 亀山市にある「亀山里山公園」は、令和5年10月に環境省の自然共生サイトに認定されています。この施設は、亀山市自然公園条例に基づいて市が運営している施設で、市内の生物多様性保全と活用のフラグシップとなっています。この施設において、市は亀山ビード株式会社と連携協定を結び、同社が従業員を月1回派遣して、長期的に維持・整備に協力する仕組みをつくりました。これは、企業の参画を単発のイベント参加ではなく、企業の資源を継続的に地域の生物多様性保全につなげたモデルケースであり、今後より多くの企業に向けて紹介し取組の喚起につなげます。 5. 宣言から実装へ進む段階的な設計 亀山市は、三重県内の基礎自治体において最も早く「生物多様性地域戦略」を策定し、生物多様性保全に積極的に取り組んできた自治体です。一方で、生物多様性の棄損に歯止めがかからず、国が生物多様性国家戦略2023-2030を策定したことを受け、令和7年度には「亀山市ネイチャーポジティブ宣言」を発表しました。また、理念を宣言するのみならず、市の最上位計画である「第3次亀山市総合計画」にもネイチャーポジティブ施策を明記し、企業との里山公園連携、金融機関との連携へと、取組を発展させてきました。今後は、地域の自然の把握、認定による価値の可視化、企業協働、資金調達や経済活動への活用へと、ネイチャーポジティブ施策を広げることで、まちづくりになくてはならない重要政策としての地位の確立を目指しています。

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