「賢く収縮」するまちづくり
他薦「縮小=サービス低下」という常識を逆転させたことです。 美咲町のスマートシュリンクは、「人口が減るから施設もサービスも一律に減らす」という発想ではありません。 残すものを選び、集めることで、むしろ価値を高める。 ここが一番面白いところだと思います。 「みさキラリ」が象徴的です。複数の施設をただ廃止するのではなく、必要な機能を一か所に集めることで、人が集まり、行政・学習・交流・買い物などが結びつく新しい拠点を生み出しました。その結果、物産センターの売上増や公民館利用者の増加という具体的な成果も現れています。 そして2026年度からは、この考え方をさらに一歩進めています。スマートシュリンクによって生み出した「ヒト・モノ・カネ」の余力を次のまちづくりへ再投資するとして、第4次振興計画では「賢く収縮する」に加えて「賢く挑戦する」という方向を打ち出しました。 つまり、拡大 → 縮小ではなく、縮小 → 集約 → 価値向上 → 再投資という循環をつくろうとしている点が、美咲町モデルの核心です。
どんな課題にアプローチしましたか?
人口減少・少子高齢化が進むなかで、公共施設と行政サービスをどう持続させるかという課題です。 人口や歳入が減少していく一方、合併前の旧町ごとに整備されてきた公共施設をそのまま維持すれば、維持管理・更新費用が将来世代の大きな負担になります。そこで美咲町は、「すべてを残す」のではなく、将来に本当に必要な機能を選び、持続可能な形で残す方向へ政策を転換しました。第三次振興計画でも、「選択と集中」により必要なセーフティネット機能を確保しながら、公共施設マネジメントなどを通じて将来に負担を残さないことを明確にしています。
どのような新たな価値を創造しましたか?
「施設を減らす」ことを、「地域の拠点をつくり直す」ことに転換しました。 中央地域では、役場、公民館、図書館、保健センター、物産センターなどを多世代交流拠点「みさキラリ」に集約。旭地域では旧旭小学校を活用した「あさひなた」に、総合支所、公民館、図書館、診療所、子どもの居場所などを集約しました。また、小中学校を統合して「旭学園」「柵原学園」という義務教育学校を整備しています。 つまり、量を減らしながら、残す施設の機能と魅力を高めるという発想です。実際、美咲物産センターでは売上が20%以上増加し、生涯学習センター内の公民館では利用者が7倍以上に増えるなど、集約によって新しい交流やにぎわいも生まれています。
どんな工夫をしましたか?
最大の工夫は、「新しい施設をつくる」と「古い施設をなくす」をセットで考えたことです。 美咲町は、必要な機能を集約・複合化する一方、役割を終えた施設については解体・撤去を進めました。特に特徴的なのは、合併特例債を新施設の建設だけでなく、旧施設の解体撤去にも積極的に活用した点です。町によれば、2024年度には一般会計の1割を超える約20億円を解体撤去費に充てました。 さらに、単なる行政主導の施設整理にせず、小規模多機能自治による地域コミュニティづくりと組み合わせたことも重要です。地域住民自身が「これから地域に何が必要なのか」を話し合うことで、施設の集約や廃止について理解を形成していく仕組みをつくりました。 また、新庁舎では将来の人口・職員減少を見越して執務スペースを3割以上縮小し、建設費だけでなく将来の解体コストまで考慮した設計が採用されています。