職員を変えるのではなく、職員が変える。 ~問いを置き、対話し、試してみる。小さな自主研究の実験~
私たちの活動は、決して大きな成功事例ではありません。 若い職員の参加はまだ少なく、庁内で誰もが知っている活動でもありません。 参加者も毎回10人前後。たった4人だった回もあります。 それでも、私たちは2か月に一度、続けています。 なぜなら、人数を増やすことだけが、この活動の価値ではないと思うからです。 「絶対に来ないと思っていた人」が、ふらりと来ることがあります。 仕事の悩みを抱えた職員が、帰り際に「ちょっと話したくて……」と声をかけてくれることがあります。 普段はなかなか話さない人同士が、活動をきっかけに、職場の廊下で立ち話をするようになったり、ここでのつながりが業務に活かされたりすることもあります。 「楽しみにしてます」と言って、何度も来てくれる人もいます。 参加できない人からは、「やってくれていること、存在が救い!いつか必ず参戦する!」と言われたこともあります。 私たちは、こうした小さな変化を「組織改革の成果」とは呼びません。 ただ、人と人との間に、今までなかった小さな接点が生まれたと捉えています。 そして、この活動を続ける中で、私たち自身も変わりました。 最初は「組織を変えなければ」と力んでいた私たちが、今は、 「組織を変えるのではなく、ここに小さな変化が生まれる余白をつくろう」と考えています。 参加者の声から新しい企画が生まれ、単発だったものが3か月の連続企画になり、そこから新しい運営メンバーが生まれる。 そして次は「ヨソオイ」という、また別の問いを置いてみる。 問いを持ち、試して、振り返り、また次の問いを生む。 この活動そのものが、私たちにとって一つの実験なのです。 だから、私たちが大切にしているのは、 「私たちが何を成し遂げたか」ではなく、 「私たちが何を問い直せるようになったか」。なのかもしれません。 「職員のウェルビーイングとは何だろう」 「休むって、どういうことだろう」 「働くって、そもそも何だろう」 「組織を変えるって、誰が変えるんだろう」 「自分は、どうありたいんだろう」 そして今度は、 「ヨソオイって、何だろう?」 まだ、答えはありません。 この活動を始めてから、私たちは行政職員としての仕事も少し違って見るようになりました。 人の暮らしの基礎を預かる行政職員だからこそ、まず自分たち自身が、働くことや人との関わり、組織のあり方について問い続ける。 職員のウェルビーイングを考えることは、単なる「職員に優しい職場づくり」ではなく、よりよい行政、そしてまちのウェルビーイングを考えることにもつながるのではないか。 その答えも、まだ出ていません。 だから、私たちはこれからも問い続けます。 目指しているのは、10年後に「大成功した自主研究」になることではありません。 10年後も、2か月に一度、 「ちょっと行ってみようかな」と思った人が、ふらりと来られる。 入職25年目で初めて来る人がいてもいい。 何度も来る人がいてもいい。 来ない時期があってもいい。 「ひとりじゃないよ。いつもここにいるよ。」 そう言える場が、組織の中に残っていること。 私たちにとって、「続いている」とは、同じことを繰り返すことではありません。 問いを持ち、試し、また次の問いを生むこと。 10年後も、きっとちょっとヘンなタイトルの企画を楽しみながら、みんなで新しい問いを探していられたらと願っています。 まだ、問いの途中です。 職員を変えるのではなく、職員が変える。 まだ小さく、まだ途中だからこそ、誰でも自分の職場で始められる。 私たちは、そんな実験を続けています。
どんな課題にアプローチしましたか?
職場の人間関係、仕事の進め方、組織のあり方などについて、職員が感じている「もやもや」や違和感を、職場の中で気軽に語り合い、考える機会は多くありません。 私たちも当初は、「働きづらさを抱える職員を何とかしたい」「組織を変えたい」と考えていました。 しかし、活動を続けるうちに、ひとつの疑問が生まれました。 「職員を変えることが、組織を変えることなのだろうか?」 そこで私たちは、職員を「変えられる対象」として捉えるのではなく、自分たちの働き方や職場、組織について問い、考え、行動する主体として捉え直すことにしました。 誰かに正解を教えてもらうのではなく、職員自身が「そもそも、これってどうなんだろう?」と問いを持ち寄り、対話し、自分にできる小さなことを試してみる。 そのための余白を、組織の中につくることを目指しました。
どのような新たな価値を創造しましたか?
私たちがつくったのは、新しい制度でも、大規模な研修でもありません。 「職員を変えるのではなく、職員が変える」ための、小さな対話の場です。 2025年3月から2か月に一度、「働きココチ検討会」を開催し、これまで9回実施しました。毎回テーマを変えながら、職員同士が仕事や組織について語り、考えています。 特徴は、答えを教える場ではなく、問いを置く場であることです。 また、参加者を増やすことを目的に、人数合わせの勧誘はしていません。 参加するかどうか、どこまで話すかは本人に委ねる。 一方で、迷っている人には「途中からでもいいよ」と伝えたり、そのテーマにぜひ触れてほしいと思う人には個別に声をかけたりもします。 つまり、人を集めるのではなく、人が自分で参加の仕方を選べる場をつくっています。 参加者は毎回同じではありません。 一度だけ参加する人もいれば、何度も来る人もいます。 それでも、2か月に一度、また場を開く。 「ひとりじゃないよ。いつもここにいるよ。」 そんな場所が組織の中にあり続けること自体に、意味があるのではないかと考えています。 そして、活動を続ける中で、参加者から「もっとやりたい」「続編がほしい」という声も生まれました。 そこで通常の単発回とは別に、「やすむワーク」という3か月連続の企画を試行しました。 テーマは、その名のとおり「やすむ」。 仕事に熱心なあまり、休むことを後回しにしがちな公務員だからこそ、休養について考え、実践することも、よりよい仕事につながるのではないか。 休養士を招き、1回聞いて終わりにするのではなく、3か月にわたって、学ぶ→忘れる→思い出す→試す→また学ぶ、を繰り返す設計にしました。 各回の間には宿題ワークにも取り組み、次の回でまた振り返る。 「忘れた頃にもう一度思い出す」ことで、単発の学びでは得にくい、日常への定着を目指したのです。 実際、今でも参加者同士で「今週末は攻めの休養して、また来週!」「その休み方、攻めの休養だね」と声を掛け合うことがあります。 学んだことが、講座の中だけで終わらず、日常の会話に残っている。それも、この活動から生まれた小さな変化です。 さらに、この企画では「運営をやってみたい人、あつまれー!」と呼びかけ、この企画だけのスピンオフ運営チームをつくりました。 企画をする人と、参加する人を固定しない。参加するだけでなく、場をつくる側にもなれる。 その選択肢を、職員に開いてみたのです。 そして10回目となる次回は、「ヨソオイ」をテーマに、自分をどう装うか、どう整えるかという、これまでとは少し違う角度から、また新しい問いを置こうとしています。