自薦
一般社団法人コレカラ・サポート
中土翔太| 2026年9月15日
#地域連携#実践#対話#市民参加

地域のみんなをプレイヤーに。 社会的孤立への支援の入口を、地域の日常にひらく「コミュニティコーピング」

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イチオシポイント

イチオシポイントは、コミュニティコーピングが一つのゲームや研修にとどまらず、参加者を地域のプレイヤーへ、さらに「次の活動を生み出す人」へとつなげていることです。 2020年の提供開始以降、体験者は3万人を超え、これまでに認定を受けたファシリテーターは実人数で累計約800名に広がりました。 その担い手も、福祉・医療の専門職や行政職員だけではありません。大学教員、地域おこし協力隊員、集落支援員、医学生、社会教育士、会社員など、多様な人が考え方に共感し、自らの地域で体験と対話の場をつくっています。自治体や社会福祉協議会が職員等を認定ファシリテーターとして養成する形での導入も20以上に広がり、京都府では京都府社会福祉協議会が事務局となって、府下20弱の市町村・市町村社協へ担い手が広がっています。 そして、参加者の変化は研究による検証も始まっています。千葉県我孫子市の体験会参加者47名を対象とした前後調査では、「この町をよくする活動は地元の熱心な人に任せておけばよい」という態度が有意に弱まり、地域課題に関わることへの「誇り」「責任感」が有意に高まりました。もともと地域活動への意識が高い参加者が多かったことによる天井効果を考慮した再分析では、「地域の課題に対して自分も何かしよう」という行動意図にも有意な変化が確認されています。研究では、コミュニティコーピングに地域活動への態度変容効果があると結論づけられています。 さらに我孫子市では、地域のキーパーソン同士がコミュニティコーピングを通じて仲間となり、認定ファシリテーターによる「あびコミュコピ」が発足。その後、専門職と市民が協働する「まちの保健室あびこ」や、地域の移動課題に取り組む新たな活動へと展開しています。論文では、コミュニティコーピングが「地域活動に関心と熱意がある人々を束ね、新たな活動につなげる触媒」のような役割を担う可能性が指摘されています。 滋賀県甲賀市でも、コミュニティコーピングの実践や開発思想を起点の一つとして、地域にいる人や資源、そのつながりを可視化する「みんなでe-こうか版まちのつながり図鑑」へ展開。さらに、「社会的に正しいことを正しさだけで伝えず、それ自体を面白くする」という発想は、小説仕立ての『コーポ・ミルフィーユの住民会議』へと発展しました。 ゲームを広めることが目的なのではありません。 ゲームをきっかけに、地域を見る目が変わる。  異なる立場の人がつながる。  「誰かに任せる」のではなく、自分にもできることを考える。  その人たちが、今度は地域に新しい場や活動を生み出していく。 専門性や所属にかかわらず、一人ひとりが地域をつくるプレイヤーになれる。その参加の連鎖を生み出していることが、コミュニティコーピングの一番の成果です。

どんな課題にアプローチしましたか?

私たちが向き合ったのは、超高齢社会の中で深刻化する「社会的孤立」です。 地域には、福祉・医療・介護などの制度や専門職による支援があります。しかし、困りごとを抱えた本人が自ら助けを求められるとは限りません。周囲が気づかないまま悩みが複雑化・重篤化し、ようやく制度や専門職につながることもあります。 だからこそ、制度的・専門的な支援とともに重要なのが、地域の日常にあるインフォーマルなつながりです。 「最近、あの人を見かけない」「いつもと少し様子が違う」。こうした小さな変化は、近所の人、友人、商店、地域活動の仲間など、日常の中で接点を持つ人だからこそ気づけることがあります。悩みがまだ小さい段階で気づき、必要に応じて地域の居場所や活動、相談窓口、専門職につなぐことができれば、深刻化を防げる可能性があります。 しかし、「地域で支え合うことが大切」と言われても、自分が何に気づき、どう関わり、誰につなげればよいのかを具体的にイメージすることは簡単ではありません。また、地域の困りごとは「行政や専門職、熱心な一部の人が担うもの」と捉えられがちです。 そこで私たちは、困りごとが深刻になる前に、地域に暮らす一人ひとりが「気づき、つなぐ」ことのできる地域をどうつくるか、という課題にアプローチしました。

どのような新たな価値を創造しましたか?

私たちが創造したのは、社会的孤立への「支援の入口」を、制度の中だけでなく地域の日常へとひらくための体験の仕組みです。 「コミュニティコーピング」は、参加者が一つの地域のプレイヤーとなり、住民の困りごとに対して、人と人、人と地域資源をつなぎながら地域を支える協力型ゲームです。 そこで求められるのは、すべての困りごとを自分で解決することではありません。 小さな変化に気づく。  できる範囲で関わる。  自分には解決できなければ、できる人や必要な支援につなぐ。 この役割なら、専門職でなくても担うことができます。 つまり、「地域の困りごとは専門家が解決するもの」から、「専門職による支援と、地域の日常にある“気づき・つなぐ力”がともに地域を支える」へと、地域課題への関わり方を転換したことが一つ目の価値です。 もう一つの価値は、異なる立場の人が地域を語るための「共通言語」をつくったことです。 同じゲームを囲んでも、福祉職、行政職員、地域住民、学生、会社員など、それぞれの経験や普段地域を見る視点によって、気づくことは異なります。その違いを振り返りで持ち寄ることで、自分には見えていなかった地域の姿や、他者の役割・強みに気づくことができます。 ゲームという共通体験があるからこそ、所属や専門用語を越えて地域について語り、「この人とは一緒に考えられる」「困ったときにはこの人につなげられる」という関係が生まれる。 「気づき、つなぐ人」を増やすだけでなく、その人たち同士をつなぎ、地域課題にともに向き合う「仲間」を生み出す。  これがコミュニティコーピングの創造した新たな価値です。

どんな工夫をしましたか?

第一の工夫は、社会的孤立という重く複雑なテーマを、「正しさ」からではなく「面白さ」から入れるゲームにしたことです。 開発の背景には、「社会的に正しいことを、正しさだけで伝えても、もともと関心のある人にしか届かない」という問題意識がありました。実際の相談事例や知識を詰め込むのではなく、ゲームデザインの専門家とともに、伝えたい本質を削ぎ落とし、純粋にゲームとして楽しめることと、社会課題への気づきが両立するよう設計しました。 「正しいから参加する」のではなく、「面白そうだから参加したら、いつの間にか地域について真剣に考えていた」という入口をつくっています。 第二の工夫は、学んでほしいことをゲームのルールそのものに埋め込んだことです。 困りごとを抱える住民は次々と現れ、対応できない状態が続けば地域全体が立ち行かなくなります。一方、一人の万能なプレイヤーがすべてを救うことはできません。他のプレイヤーと相談し、人や地域資源を見つけ、つなぐ必要があります。 これにより、「困りごとが深刻になる前に気づくこと」「一人で抱え込まず、誰かにつなぐこと」の意味を、講義ではなく体験から理解します。 第三の工夫は、ゲームを遊んで終わらせず、「振り返りと対話」をプログラムの中核に置いたことです。 ゲームでの出来事を現実の地域に置き換え、「なぜ困りごとが深刻になったのか」「現実なら誰が気づけるか」「地域にはどんな人や資源があるか」「自分なら何ができるか」を語り合います。立場によって異なる気づきを共有することそのものを、相互理解と仲間づくりのプロセスにしています。 さらに、開発者だけが全国を回るのではなく、各地域の人自身が場をつくれるよう「認定ファシリテーター制度」を設けました。体験する人を増やすだけでなく、次の参加の場をつくる人を増やす仕組みまで含めて設計しています。

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