LINEから始まる、住民起点の政策づくり ― 暮らしのひとことを整理し、議員に届ける「ふくしま桃子」
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LINEから始まる、住民起点の政策づくり ― 暮らしのひとことを整理し、議員に届ける「ふくしま桃子」

飯舘村議会議員 横山秀人
飯舘村議会議員 横山秀人| 2026年9月14日
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イチオシポイント

住民が議員に会う機会は、とても少ない。会えても、うまく伝えられない。それが、これまでの「当たり前」でした。 その当たり前を、LINEのひとことから変える取り組みです。「バスの本数が少ない」——そのひとことを、AI「ふくしま桃子」が対話しながら整理し、議員に分かりやすい「相談メモ」にします。届け先の議員は、住民が自分で選びます。匿名・無料で、むずかしい言葉はいりません。 AIは声を盛らず、向きを変えず、裏方に徹します。主役は、住民の皆さんの言葉です。 2026年7月6日の公開から2か月。届いた声は、まだ3件です。ただし3名とも、村政について具体的な提案を議員に届けたのは、これが初めてでした。そして3件とも、その後どうなったかを最後まで記録し、公開しています。 1件目|交差点の看板が視界を妨げる → 現地確認と担当課への橋渡しを経て、撤去。解決しました。 2件目|一人暮らしは心配、みんなで住める住まいを → 一人の声が、村内の医療・看護・介護・福祉の関係者8名への聞き取りに広がり、9月8日の一般質問になりました。 3件目|地域おこし協力隊の活動を知りたい、報告会を → 9月の決算審査で、資料請求のうえ提案します。 村民の方とのLINE対話は、夜8時、平日の午後、土曜の朝6時——思い立ったときの、ひとことからでした。 とりわけ2件目では、LINEで届いた一人の不安が出発点となり、一つのテーマで8名から詳しく話を伺うところまで広がりました。議員として、こんな聞き取りは初めてです。ひとことが、地域の対話に育ちました。 そして、うまくいかなかったことも、そのまま書いています。2件目では、新しい約束を引き出せませんでした。それも含めて公開しています。「届けたら、どうなったか」が見えることが、次のひとことを生むと考えています。

どんな課題にアプローチしましたか?

暮らしの声の多くは、議会に届く前に消えてしまっているかもしれません。「こんなことで議員に相談するなんて大げさ」「うまく言葉にできない」「誰に言えばいいか分からない」。小さな声ほど、届けるきっかけのないままに。 でも、その声は「バスの本数」「雪かき」「公園のうっそうとした木」——大きな計画の話ではなく、暮らしのひとことがほとんどです。生活者にとってはそこが一番大事で、市区町村議員なら、身近な関係性の中で次に進めることができます。 議員の側にも事情があります。町村議員の多くは兼業で、時間も人手も限られています。私自身、村民とお会いする時間の少なさと、いただいた声を質問や提案に育てる難しさを感じてきました。 声の入口と、提案の出口。その両方を、LINEとAIで何とかできないか——それがこの取り組みの出発点です。 そして、公開してみて初めて見えた課題があります。桃子と対話して自分の声を1枚に整理したあと、議員には送らず、そこで終える方が多いのです。いただいた感想から、理由の多くは「議員のことをよく知らない」ことだと分かりました。入口の敷居を下げても、その先に知らない人がいれば、手は止まります。 だから、いま向き合っているのは次の3つです。 1.声の入口:ひとことで、身構えずに言えること 2.届ける不安:誰に、どう届くのか、届けたらどうなるのかが見えること 3.その後:一般質問をして終わり、ではなく、結果が本人と地域に返ること 3つ目がいちばん難しく、いちばん大事だと考えています。「言っても変わらない」という諦めは、変わらなかったから生まれるのではなく、その後が見えないから生まれるのだと思うからです。

どのような新たな価値を創造しましたか?

1. 政策提案の骨格を、住民が自分でつくる 住民はAI(LINE内)との対話の中で思いを整理し、自分の言葉を書き足し、視点を選び直しながら、相談メモを自分で育てます。議員に声を届けるまでの時間そのものが、自分の暮らしと地域を考える、政策立案の機会になります。 届いた議員の側では、相談メモを過去の会議録や総合計画と照合し、他自治体の事例を調べ、一般質問や予算・決算審査での質問・提案へ。住民のひとことが、根拠のある議論の材料に育ちます。 2. 一人のひとことが、8人の聞き取りに広がった 事例2件目|「一人暮らしは心配。みんなで住める公営住宅を」 まずご本人にお会いして、聞き取りをしました。同じころ、村内の集いの有志からも「村で暮らし続けたい」との嘆願書が届き、二つの声が重なります。そこで、村内の医療・看護・介護・福祉の関係者8名を訪ね、現場の状況を詳しく伺いました。 見えてきたのは、病気や介護のために長年の仲間と離れて村外で暮らさざるを得ない方がいること。そして関係者の側にも、「特定の施設にこだわらず、知恵や経験を持ち寄って一緒に考えたい。自分たちも役に立ちたい」という思いがあることでした。一人の不安として届いた声が、地域の課題として輪郭を持ちました。 ここで分かったのは、相談メモは終着点ではなく、聞き取りの出発点になるということです。一人の不安が言葉になったことで、誰に何を聞けばよいかがはっきりしました。そして、伺った方々は「自分たちも役に立ちたい」とおっしゃいました。声を届けた人が一人増えると、話し合える人が何人も見つかる。 一つのテーマでこれだけの人数から話を伺ったのは、議員として初めてのことです。 議場での問いは、その先にありました。 3. 声が一巡したことを、3件の記録で示せた 1件目|月曜の夜20時20分作成。「交差点のポスター看板が、視界を妨げる」 最初のひとことから議員に届くまで4分。お礼を伝え、現地を確認し、担当課へ問い合わせました。持ち主の方のご協力で看板は撤去され、交差点の見通しがよくなりました。役場の運用ですぐ直ることは、実はたくさんあります。 2件目の続き|火曜の午後15時20分作成。9月8日、一般質問へ 村の答えは「村内で暮らし続けたい人は45%」「介護が必要な方向けの住まいは、事業者の人手不足で開始の目途が立たない」「住まいの形を話し合う場は新しくは設けない」。 新しい約束は、引き出せませんでした。ただ、村が検討してきたのは「介護が必要と認定された人」の住まいで、住民の声は「そうなる前から、知り合いの近くで、みんなで住める住まい」だった——この二つは別のものだ、というずれを議場で申し上げ、記録に残せました。結果は、議員からご本人へお伝えしています。次は、住宅を担当する課への確認から動きます。 3件目|土曜の朝6時10分「地域おこし協力隊の活動を知りたい。報告会を」 事業の効果を確かめる場である決算審査が適切と判断しました。各課説明の場で、協力隊の活動と成果をまとめた表を追加資料として請求。そのうえで質疑では、「活動を知りたい」という村民の声を紹介し、報告の場を設けることを提案します。 4. 「届いた声のその後」を、公開の記録にした 3件の経過は、要旨のみ・個人が分からない形で、すべてホームページに公開しています。解決したことも、約束を引き出せなかったことも、同じ形で。 声を届けた本人には、議員が直接ご報告します。 寄せられた感想と、そこから直したことを日付つきで並べた「改良の記録」も公開しています。採用しなかった意見も、理由とともに残しています。 5. 議員の側の「当たり前」も変えた 当初は、届いた声の行き先を「一般質問」に集めがちでした。3件を経て、議員には12の動き方があり、一般質問はその一つにすぎないことを整理し直しました(現地確認、担当課への相談、所管事務調査、予算審査、決算審査、議会としての提言など。全国町村議会議長会のモデル例に基づく整理)。 そのうえで、順位付けをやめました。「今すぐ動ける/時期をみて動ける/議会みんなで考える」という性格の違いを示すだけにし、「全部やる必要はありません。今できる一歩を、一つ選べば十分です」と添えています。担当課への確認が一般質問より下、ということはないからです。 そして、一般質問をしたら終わり、ではありません。 動いたら、その後どうなったかを確かめて、必要ならまた一つ動く。3件が、それを教えてくれました。

どんな工夫をしましたか?

1.声を盛らない設計 AIは事実を足さず、望みや心配といった言葉の向きも変えません。あなたの声は、あなたの声のまま議員に向かいます。 2.中立であること 届け先の議員は必ず住民が選び、特定の議員に自動で送られることはありません。「誰に相談すればいい?」と迷う人にも、特定の議員をおすすめせず、公開されている会議録を自分で調べる方法を案内します。 3.身構えなくていい入口 名前も住所もいりません。データは一定期間で自動削除されます。「むずかしい言葉で書かなくても、大丈夫」を合言葉にしました。 4.届ける前から、その先が見えるように 議員に届いたあと声がどう進むのか、12の動き方とよくある流れを、住民向けの言葉で公開しています。相談メモのページにも「この声で考えられそうな動き方」を添えました。 5.手元に残せるように 整理した1枚は24時間で消える設計ですが、議員に送らず自分で読んで終える方が多いことが分かり、文字をコピーできるPDFとして保存できるボタンを付けました。届けなくても、自分の考えの整理として持っておける。それも一つの使い方だと考えています。 5.議員のAI活用と、かみ合う形 相談メモが「現状確認・課題共有・政策提案」に整理されているため、過去の会議録や総合計画との照合、他自治体の事例調べ、質問案の作成まで、流れが途切れません。この手順は、他の議員がそのまま使えるよう、指示文(プロンプト)をコピーできる形で公開しています。 6.小さく、続けられる形 使っているのは、LINE公式アカウントと汎用の生成AI、レンタルサーバーの3つだけです。相談メモを組み立てる仕組みは自分で作りましたが、大規模なシステム開発や専用アプリは必要ありません。大きな予算も要りません。だから、どの町村でも、一人の議員から始められます。 7.共創で育てる 村民、移住者、大学生、高校の同級生、大学ゼミの卒業生——県内外30名が体験し、感想をいただき、改良を重ねました。公開後も匿名の感想フォームを常設しています。いただいた感想と、そこから直したことは、日付つきで全部「改良の記録」に並べてあります。採用しなかったご意見も、その理由とともに残しています。かっこ悪いところも、そのままです。 運営者は、飯舘村議会議員 横山秀人です。村議会議員としての活動の中で、試しながら続けています。全国の方々にご利用していただけるような取組みにしたいです。

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