「議員を増やす」から「議会に関わる人を増やす」へ ― 無投票を起点とした、住民と育てる民主主義の土壌づくり ―
自薦最大のポイントは、「無投票」という民主主義の危機を、議会が自らを変えるための機会に転換したことである。 議員のなり手不足は、候補者をどう増やすかという「人材確保」の問題として捉えられがちである。しかし芽室町議会は、「そもそも住民にとって議会は身近なのか」、「議員という仕事は魅力的なのか」、「誰もが安心して政治参加できる環境になっているのか」と問い直した。 そして、議会自身が変わることを選択した。 制度改革、活動環境の整備、人材育成、情報発信、住民参加を一つの改革としてつなぎ、住民との対話を重ねながら、議会基本条例を「掲げる理念」から「課題を解決する仕組み」へと実装した。 これは、議員の「なり手」を探す改革ではない。 「議員を増やすのではなく、議会に関わる人を増やす」。 住民が議会を知り、議会と対話し、政策形成に関わり、その先に「自分も議会に関わってみたい」という人が生まれる。そんな民主主義の土壌そのものをつくる挑戦である。 一つの町議会の取組みにとどまらず、全国の地方議会が直面する「なり手不足」と「民主主義の持続可能性」に対して、住民との対話を通じて議会自らが変わるという、全国の地方議会が応用できる総合モデルである。
どんな課題にアプローチしましたか?
令和5年、芽室町議会議員選挙は町議会史上初の無投票となった。私たちはこれを単なる「議員のなり手不足」ではなく、住民が候補者を選ぶ機会を失い、議会の多様性・正統性・持続可能性が揺らぐ「民主主義の危機」と捉えた。 そこで、「なり手を増やす」だけでなく、「なぜ議会に関わりにくいのか」「なぜ議員という選択肢が生まれにくいのか」を議会自身の課題として問い直した。 議会基本条例を実装基盤として、①議員定数・報酬の見直し、②ハラスメントを防ぐ活動環境の整備、③将来の担い手を育てる「議員の学校」、④議会を身近にする情報発信、⑤住民参加の仕組みを一体的に進めた。 無投票という「危機」を、議会自身が変わり、住民との関係を再構築する「改革の起点」へと転換した。
どのような新たな価値を創造しましたか?
「議員を増やす」という従来型の「なり手確保」から、「議会に関わる人を 増やす」という発想へ転換した。 芽室町議会が創造しようとしたのは、議会を「選挙で選ばれた議員だけが活動する場」から、「住民が知り、学び、対話し、意見を届け、その先に自らも担い手になれる場」へと変えていく新しい参加の仕組みである。 定数・報酬の見直し、ハラスメント防止条例、議員の学校、芽室町議会ナビ、議会モニター、議会サポーター、議員研修、議会ホットボイスなどを個別の施策で終わらせず、一つの政策パッケージとしてつないだ。 その結果、住民との接点を「選挙の時だけ」から「日常的な参加」へ広げることを目指す、議会と住民の新しい関係を構築した。 「議員のなり手を探す」のではなく、「議会に関わる人が生まれる土壌をつくる」。 これが、本取組が生み出した新しい価値である。
どんな工夫をしましたか?
最大の工夫は、議会だけで改革を決めなかったことである。 定数・報酬の見直しでは、第三者機関による審議を経た上で、27会場、延べ234人との意見交換を実施。議会に都合のよい結論を求めるのではなく、必要な情報を示し、住民の疑問や批判も受け止めながら対話と合意形成を重ねた。その結果、多様な民意を反映するため定数16人を維持し、議員の職責と活動量を踏まえて報酬を改定した。 また、制度だけでは担い手は生まれないと考え、安心して政治参加できる環境として議会ハラスメント防止条例を制定。さらに全6回の「議員の学校」を開催し、18人の住民が議会や政策形成を学び、議員と対話する機会をつくった。この中からすでに4名の政治参加を考えている方が生まれている。 加えて、芽室町議会ナビ、議会モニター、議会ホットボイスなど、住民が議会を知り、参加し、改革を点検できる仕組みを組み合わせた。 一つひとつの施策を「点」で終わらせず、「住民参加→対話→改革→検証→改善」という循環につないだことが工夫である。